もも太ろう 第4話
もも太ろうは、犬とさるをしたがえて、船からひらりとおかの上にとび上がりました。
見はりをしていたおにのへいたいは、その見なれないすがたを見ると、びっくりして、あわてて門の中ににげこんで、鉄の門をかたくしめてしまいました。その時犬は門の前に立って、
「日本のもも太ろうさんが、お前たちをせいばいにおいでになったのだぞ。開けろ、開けろ。」
とど鳴りながら、ドン、ドン、とびらをたたきました。おにはその声を聞くと、ふるえ上がって、よけい一生けん命に、中からおさえていました。
するときじが屋根の上からとび下りてきて、門をおさえているおにどもの目をつつきまわりましたから、おにはへい口してにげ出しました。その間に、さるがするすると高い岩かべをよじ登っていって、ぞうさなく門を中から開けました。
「わあッ。」とときの声を上げて、もも太ろうの主じゅうが、いさましくおしろの中にせめこんでいきますと、おにの大しょうも大ぜいの家来を引きつれて、一人一人、太い鉄のぼうをふり回しながら、「おう、おう。」とさけんで、向かってきました。
けれども、体が大きいばっかりで、意気地のないおにどもは、さんざんきじに目をつつかれた上に、今度は犬に向こうずねを食いつかれたと言ては、いたい、いたいとにげまわり、さるに顔を引っかかれたといっては、おいおいなき出して、鉄のぼうも何も放り出して、こうさんしてしまいました。
おしまいまでがまんして、たたかっていたおにの大しょうも、とうとうもも太ろうに組みふせられてしまいました。もも太ろうは大きなおにのせ中に、馬乗りにまたがって、
「どうだ、これでもこうさんしないか。」
といって、ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう、おさえつけました。
おにの大しょうは、もも太ろうの大力で首をしめられて、もう苦しくってたまりませんから、大つぶのなみだをぼろぼろこぼしながら、
「こうさんします、こうさんします。命だけはお助け下さい。その代わりにたから物をのこらずさし上げます。」
こう言って、ゆるしてもらいました。
おにの大しょうはやくそくのとおり、おしろから、かくれみのに、かくれがさ、家での小づちににょ意ほうじゅ、そのほかさんごだの、大まいだの、るりだの、世界で一番とうといたから物を山のように車につんで出しました。
もも太ろうはたく山のたから物をのこらずつんで、三人の家来と一しょに、また船に乗りました。帰りは行きよりもまた一そう船の走るのが速くって、間もなく日本の国に着きました。
船がおかに着ますと、たから物を一ぱいつんだ車を、犬が先に立って引き出しました。きじがつなを引いて、さるがあとをおしました。
「えんやらさ、えんやらさ。」
三人は重そうに、かけ声をかけかけ進んでいきました。
うちではおじいさんと、おばあさんが、かわるがわる、
「もうもも太ろうが帰りそうなものだが。」
と言い言い、首をのばして待っていました。そこへもも太ろうが三人の立若なりっぱな家来に、ぶんどりのたから物を引かせて、さもとくいらしい様子をして帰って来ましたので、おじいさんもおばあさんも、目も鼻もなくしてよろこびました。
「えらいぞ、えらいぞ、それこそ日本一だ。」
とおじいさんは言いました。
「まあ、まあ、けがなくって、何よりさ。」
とおばあさんは言いました。
もも太ろうは、その時犬とさるときじの方を向いてこう言いました。
「どうだ。おにせいばつはおもしろかったなあ。」
犬はワン、ワンとうれしそうにほえながら、前足で立ちました。
さるはキャッ、キャッとわらいながら、白い歯をむき出しました。
きじはケン、ケンと鳴きながら、くるくるとちゅう返りをしました。
空は青あおと晴れ上がって、お庭にはさくらの花がさきみだれていました。
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