ももたろうは、いぬとさるをしたがえて、ふねからひらりとおかのうえにとびあがりました。
みはりをしていたおにのへいたいは、そのみなれないすがたをみると、びっくりして、あわててもんのなかににげこんで、くろがねのもんをかたくしめてしまいました。そのときいぬはもんのまえにたって、
「にほんのももたろうさんが、おまえたちをせいばいにおいでになったのだぞ。あけろ、あけろ。」
とどなりながら、ドン、ドン、とびらをたたきました。おにはそのこえをきくと、ふるえあがって、よけいいっしょうけんめいに、なかからおさえていました。
するときじがやねのうえからとびおりてきて、もんをおさえているおにどものめをつつきまわりましたから、おにはへいこうしてにげだしました。そのまに、さるがするするとたかいいわかべをよじのぼっていって、ぞうさなくもんをなかからあけました。
「わあッ。」とときのこえをあげて、ももたろうのしゅじゅうが、いさましくおしろのなかにせめこんでいきますと、おにのたいしょうもおおぜいのけらいをひきつれて、ひとりひとり、ふといてつのぼうをふりまわしながら、「おう、おう。」とさけんで、むかってきました。
けれども、からだがおおきいばっかりで、いくじのないおにどもは、さんざんきじにめをつつかれたうえに、こんどはいぬにむこうずねをくいつかれたといっては、いたい、いたいとにげまわり、さるにかおをひっかかれたといっては、おいおいなきだして、てつのぼうもなにもほうりだして、こうさんしてしまいました。
おしまいまでがまんして、たたかっていたおにのたいしょうも、とうとうももたろうにくみふせられてしまいました。ももたろうはおおきなおにのせなかに、うまのりにまたがって、
「どうだ、これでもこうさんしないか。」
といって、ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう、おさえつけました。
おにのたいしょうは、ももたろうのだいりきでくびをしめられて、もうくるしくってたまりませんから、おおつぶのなみだをぼろぼろこぼしながら、
「こうさんします、こうさんします。いのちだけはおたすけください。そのかわりにたからものをのこらずさしあげます。」
こういって、ゆるしてもらいました。
おにのたいしょうはやくそくのとおり、おしろから、かくれみのに、かくれがさ、うちでのこづちににょいほうじゅ、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの、せかいでいちばんとうといたからものをやまのようにくるまにつんでだしました。
ももたろうはたくさんのたからものをのこらずつんで、さんにんのけらいといっしょに、またふねにのりました。かえりはいきよりもまたいっそうふねのはしるのがはやくって、まもなくにほんのくににつきました。
ふねがおかにつますと、たからものをいっぱいつんだくるまを、いぬがさきにたってひきだしました。きじがつなをひいて、さるがあとをおしました。
「えんやらさ、えんやらさ。」
さんにんはおもそうに、かけごえをかけかけすすんでいきました。
うちではおじいさんと、おばあさんが、かわるがわる、
「もうももたろうがかえりそうなものだが。」
といいいい、くびをのばしてまっていました。そこへももたろうがさんにんのリっ若なりっぱなけらいに、ぶんどりのたからものをひかせて、さもとくいらしいようようすをしてかえってきましたので、おじいさんもおばあさんも、めもはなもなくしてよろこびました。
「えらいぞ、えらいぞ、それこそにっぽんいちだ。」
とおじいさんはいいました。
「まあ、まあ、けがなくって、なによりさ。」
とおばあさんはいいました。
ももたろうは、そのときいぬとさるときじのほうをむいてこういいました。
「どうだ。おにせいばつはおもしろかったなあ。」
いぬはワン、ワンとうれしそうにほえながら、まえあしでたちました。
さるはキャッ、キャッとわらいながら、しろいはをむきだしました。
きじはケン、ケンとなきながら、くるくるとちゅうがえりをしました。
そらはあおあおとはれあがって、おにわにはさくらのはながさきみだれていました。
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